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世田谷区の産業、特徴は?世田谷の商業、工業、農業

公開日:2016年7月18日

住宅街が広がる世田谷ですが、実は事業所の数では渋谷区を上回るなど、企業も多数存在しています。今回は、世田谷にはどのような産業があるのか紹介します。

世田谷の昼間人口と夜間人口

東京23区では最も人口が多い世田谷区ですが、東京都が発表している「東京都の昼間人口」の統計によると、昼間人口は大きく減少していることが分かります。

この統計によれば、2010年の世田谷区の夜間人口は87万7138人と23区1位ですが、昼間人口は81万2810人となり、6万4000人減少し、港区、千代田区に次ぐ3位となります。夜間人口を100とした場合の昼間人口は92.7となり、23区でも増加率が高い順で並べた場合は16番目、23区内で昼間人口が減少している区は11区の中では8番目に減少率が大きく、昼間は多くの人口が都心へと通勤していることがうかがえます。

大学が多いことから区外から通う在学者も多いと見られ、区内へは杉並区、大田区、目黒区、調布市といった近隣の区から流入する人が多く、新宿区や中央区といった都心・副都心区への流出が多くなっています。基本的には仕事で流入する人よりは、仕事で流出する人が多い区ということにはなりそうです。

土地の使用状況

では、世田谷区内の土地はどのように使用されているのでしょうか。区では5年に一度、「世田谷区土地利用現況調査」を行い、その報告書を発表しています。最新の調査は2016年6月から12月に行われることになっており、こちらは2017年に公開予定です。そのため、現在公開されているものは2011年度の調査のものです。

土地利用は大きくは二つに分かれ、住宅のほか商業系や工業系も含む「宅地」と、道路や公園、農地、河川などを含む「非宅地」に分けられます。世田谷区は宅地が3857.2ヘクタールで66.4%、非宅地が1949.4ヘクタールで33.6%となっており、6割以上は「宅地」として利用されています。

土地利用のグラフ

次に宅地は、「住居系」「公共系」「商業系」「工業系」「農業系」に分けられます。世田谷区では、この中でも人が住む用地となっている「住居系」が2867ヘクタールで宅地の7割以上を占め、全体では49.4%と区内のほぼ半分が住宅となっており、広大な住宅地が広がっていることが分かります。次いで「公共系」が550.8ヘクタールと全体の9.5%(宅地の14%)を占め、そのうち約7割が教育文化施設と、学校関係が多くなっていることも見てとれます。

産業関係では、「商業系」が373.7ヘクタールと全体の6.4%(宅地の10%)を占めますが、工業系は63.3ヘクタールと全体の1.1%(宅地の2%)、農業系に至っては2.4ヘクタールと0.1%にも満たない数字となっています。産業としてはほとんどが「商業」となっていることが分かりまりす。ただ、その土地利用に関しては、産業関連をすべてあわせても公共系より少なくなっており、産業利用の割合は高くないようです。

宅地利用の割合

「非宅地」は、「交通系(道路・鉄道)」「公園系」「農地系」「空地系(未利用地・屋外利用地)」「河川系」「緑地系(原野・森林)」に分かれており、最も多いのが「交通系(道路)」で1004.4ヘクタールと非宅地の5割以上、全体では17.3%を占めます。次いで公園系の327.2ヘクタールで全体の5.6%(非宅地の17%)、空き地系(屋外利用地)が232.5ヘクタールで全体の4%(非宅地の12%)と続きます。森林や原野、河川など自然が残る面積は全体のわずか2.1%となっています。

産業関係では、「農地系」が108.8ヘクタールと全体の1.9%(非宅地の6%)を占め、「空地系(未使用地)」(116.5ヘクタール)や自然面積とほぼ同じで、「交通系(鉄道)」(40.2ヘクタール)の約2.7倍となっています。

非宅地の利用割合

過去20年の変遷では、土地利用の全体の割合では大きな変化はありませんが、宅地では91年に361.9ヘクタールだった商業系は373.7ヘクタールと約4%増加する一方、工業系は123.2ヘクタールから63.3ヘクタールとほぼ半減し、農業系は11.0ヘクタールから2.4ヘクタールと8割近く減少しています。

非宅地では、農地系が251.1ヘクタールから108.8ヘクタールと6割近く減少しており、多くが住宅に転換されたと見られます。未使用地も150.5ヘクタールから116.5ヘクタール、森林も30.1ヘクタールから14.7ヘクタールへと減少しているものの、数字の大きさから見れば、農地の減少が大きくなっています。

地域別特性

世田谷、北沢、玉川、砧、烏山の地域別で見た場合、商業地の割合が最も多いのは、区役所がある「世田谷」地域と二子玉川や用賀などがある「玉川」地域で、それぞれ7.3%を占めています。北沢・烏山地域では5.7%となっており、多摩川・仙川・野川が流れ宅地の割合が最も低い砧地域で5.5%となっています。一方で、工業系の割合は区内のいずれの地域でも1.0%程度と大きな違いはなく、烏山で1.4%、砧で1.3%と若干高いぐらいです。農地系では、砧が最も大きい割合となっています

地域別の人口密度では、私鉄沿線の新宿・渋谷寄りの区内東部地域ほど高くなり、特に三軒茶屋周辺の三軒茶屋2丁目が1平方キロメートルあたり約28000人と区内でも最も高く、この周辺地域が区内で最高の人口密集地域となっています。商店も人口密度が高い私鉄の主要駅付近に集まる傾向があり、こういった地域が区内でも産業が発展している地域と言えます。一方、区内西部の成城や砧以南の多摩川寄りでは、人口密度は密集地の半分以下となり1万人を切る地域も出てきます。こういった地域では比較的大きめの住宅が多かったり、非宅地系の面積が多かったりと、産業地域とは異なった側面を見せます。

事業所数

世田谷区内の事業所数は東京都統計年鑑によると2014年には2万8994件でした。ピーク時だった1996年の2万9790件から年々徐々に減少し一時は2万4000件台まで減っていましたが、近年は増加傾向にあるようです。23区内では、港区(3万9375件)、中央区、千代田区、新宿区、大田区に次いで第6位となり、7位の渋谷区(2万8613件)を若干ですが上回ります。

一方、従業員数は28万8580人と23区内では第9位となります。事業所数では上回った渋谷区の従業員数は50万3767人(5位)と世田谷区の倍近くとなり、従業員が少ない中小企業が多いことが伺えます。従業員数を事業所数で割った1事業所あたりの従業員数は9.95人と、23区内では16位となり、他の区に比べても小規模な事業所が多いことが分かります。

従業員の男女構成では、世田谷区は男性15万1915人、女性13万6592人となり、女性の比率は47.33%と、これは23区内で1位の数字です。この数字には、住宅が多い世田谷では主婦のパートが多かったり、看護・福祉といった女性の割合が高い事業所が多いといった理由が想像できそうです。

23区の区別事業所数(事業所が多い順)

区名 事業所数 従業員数 1事業所あたりの従業員数 男性従業員 女性従業員 女性割合
港区 39375 1014842 25.77 659809 352884 34.77%
中央区 37869 756052 19.96 466333 287169 37.98%
千代田区 34250 1038143 30.31 658690 373028 35.93%
新宿区 33602 693036 20.62 411226 280483 40.47%
大田区 31432 375194 11.94 235228 139936 37.30%
世田谷区 28994 288580 9.95 151915 136592 47.33%
渋谷区 28613 503767 17.61 287194 212353 42.15%
足立区 25887 236348 9.13 133141 102570 43.40%
台東区 24446 246917 10.10 153973 92450 37.44%
江戸川区 21840 196949 9.02 108413 88357 44.86%
品川区 21609 412700 19.10 270364 141524 34.29%
練馬区 21426 195639 9.13 104310 91266 46.65%
杉並区 20592 173874 8.44 93694 80092 46.06%
豊島区 19938 279586 14.02 163197 116306 41.60%
板橋区 19343 213374 11.03 118796 94477 44.28%
江東区 19112 375745 19.66 246841 128027 34.07%
葛飾区 17953 142902 7.96 77526 65334 45.72%
墨田区 16884 179072 10.61 106073 72690 40.59%
文京区 14316 226335 15.81 135608 90711 40.08%
北区 13701 142168 10.38 83012 58686 41.28%
中野区 12917 128078 9.92 72560 55357 43.22%
目黒区 12211 141132 11.56 76123 64705 45.85%
荒川区 9899 85115 8.60 49801 35287 41.46%

産業別割合

東京都統計年鑑での分類によると2014年、世田谷区の事業所のうち民間事業所は以下のように分類されます。(※印事業所の総数には公的機関も含まれるため、上の表の事業所数とは総数が異なります。)

産業大分類名 事業所数 従業員数 男性従業員数 女性従業員数 女性割合
鉱業・採石業・砂利採取業 1 1
農林漁業 53 291 219 72 24.74%
卸売・小売業 7,253 59,223 30,191 29032 49.02%
宿泊・飲食業 4,028 39,236 18,202 21034 53.61%
不動産・物品賃貸業 2,934 12,835 7,910 4925 38.37%
医療・福祉 3,032 39,809 11,479 28330 71.16%
建設業 1,926 14,712 11,848 2864 19.47%
製造業 872 6,866 4,390 2476 36.06%
教育・学習支援業 1,218 21,963 11,530 10433 47.50%
運輸・郵便業 541 13,946 12,490 1456 10.44%
情報通信業 637 9,324 6,290 3034 32.54%
金融・保険業 333 5,518 2,626 2892 52.41%
複合サービス事業 93 1,654 1,004 650 39.30%
生活関連サービス・娯楽業 2,807 14,894 7,078 7816 52.48%
学術研究,専門・技術サービス業 1,486 7,902 4,759 3143 39.77%
サービス業(他に分類されないもの) 1,340 17,577 11,109 6468 36.80%
電気・ガス・熱供給・水道業 8 498 424 74 14.86%
民間企業合計 28561 266248 141549 124699

割合をグラフにすると以下の通りです。

事業所数別産業分類

世田谷区内の事業所のうち、4分の1が卸・小売業となっており、続いて飲食・宿泊業が14%、福祉・医療が11%と続き、この3つの産業で全体の半数を占めています。さらに不動産業と生活関連・娯楽が10%ずつで、この5産業で全体の7割となります。

区内の産業の大多数が、実際の生活に関連があるサービスを提供している企業ということになりそうです。

一方、従業員数別の割合でグラフにした場合は以下の通りです。

従業員数別の産業分類

全体的に割合では事業所数の割合と大きな変動はありませんが、個別業種の数字では、「医療・福祉」「教育・学習支援」「運輸・郵便」「情報通信」の割合が大きく増えており、「卸・小売」が若干減少、「不動産・物品賃貸」「生活関連・娯楽」が大きく減少しているようです。

2006年から8年間の変動で見てみると、事業所数では全体で約1割程度増えています。特に「情報通信業」「不動産・物品賃貸業(※但し、2006年は不動産業のみ)」「医療・福祉」が大きく増えている一方、「運輸・郵便業(※但し、2006年は運輸業のみ)」が大きく減少し、「卸売・小売業」や「製造業」も減少しています。従業員数では、「宿泊・飲食業」が事業所数の伸びに比べて従業員数の伸びが大きいことが分かります。

産業大分類 2006年 2014年 事業所数変動 従業員数変動
事業所数 従業員数 男性従業員数 事業所数 従業員 男性従業員数
鉱業・採石業・砂利採取業 0 0 0 1 1
農林漁業 49 416 324 53 291 219 8.16% -30.05%
卸売・小売業 7665 61550 33770 7253 59223 30191 -5.38% -3.78%
宿泊・飲食業 3827 26099 13966 4028 39236 18202 5.25% 50.34%
不動産・物品賃貸業 2014 8324 5079 2934 12835 7910 45.68% 54.19%
医療・福祉 2298 30122 9020 3032 39809 11479 31.94% 32.16%
建設業 1812 14271 11655 1926 14712 11848 6.29% 3.09%
製造業 931 9571 6596 872 6866 4390 -6.34% -28.26%
教育・学習支援業 1156 25070 13112 1218 21963 11530 5.36% -12.39%
運輸・郵便業 751 10735 9980 541 13946 12490 -27.96% 29.91%
情報通信業 363 7711 5587 637 9324 6290 75.48% 20.92%
金融・保険業 259 5503 2439 333 5518 2626 28.57% 0.27%
複合サービス事業 103 2546 1656 93 1654 1004 -9.71% -35.04%
生活関連サービス・娯楽業 存在せず 存在せず 存在せず 2807 14894 7078
学術研究・専門・技術サービス業 存在せず 存在せず 存在せず 1486 7902 4759
サービス業(他に分類されないもの)
(※増減には、2008年には存在しなかった2分類を含む)"
4780 33167 19069 1340 17577 11109 17.85% 21.73%
電気・ガス・熱供給・水道業 14 994 783 8 498 424 -42.86% -49.90%
総数 26022 236079 133036 28561 266248 141549 9.76% 12.78%

商業・サービス業

工業

伝統工芸

農業

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